アッサラーム・アレイクム السلام عليكم アラブ首長国連邦（UAE）からこんにちは！今回は、教育を国家の最重要項目に据えるUAEの学校教育についてお届けします。

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UAEでは幼稚園から大学まで教育費が無料です！

前回の連載記事でもお伝えしたとおり、外国人人口比率8割を超えるUAEでは様々なカリキュラムを提供する学校があり、世界レベルの教育が構築されています。

UAE国民が国公立の学校に通う場合、幼稚園から大学まで無料で教育が受けられます！

また、国民でなくても成績次第でUAEの学校に入学することが可能。私立学校でも世界中から集まる子供達のために、様々なカリキュラムを用意しています。

外国人人口比率８割超の国ってどんな感じ？

外国人比率が8割を超えるUAEでは、道路標示もスーパーの品質表示も、病院内の説明や案内も、公用語のアラビア語に加え英語でも表記されています。

子供達も、アラビア語に加え英語も堪能であることが求められながら生活をしていますよ。

私が住む町アル・アインは、アブダビ首長国の一部です。今回の記事ではUAEの中でも最大の面積＆人口を持つアブダビの教育事情について詳しくお伝えできればと思います。

アブダビの教育機関には

• 国公立校
• 私立校
• 生涯学習センター

があります。

私立校のカリキュラムは様々ですが、以下の4つの形式を取り入れている学校が主となります。

• イギリス式
• アメリカ式
• インド式
• 国際バカロレア（IB：International Baccalaureate）認定校

なお、私立学校へは外国人生徒のほとんどと、国民の約六割が通うと言われています。

アブダビにおける様々な教育の開発と管理、指導、採用を実施しているのが「アブダビ教育委員会／Abu Dhabi Education Council （ADEC） 」です。

アブダビ教育委員会は、国公立学校や生涯学習施設の管理、指導、採用、そして私立学校へも監査指導をしています。

アブダビ教育委員会が提示するアブダビの教育指針には

アブダビの文化と遺産を尊重した世界基準の教育システムを構築することにより、変化する世界に対応でき、かつ自国の価値観や伝統の維持に努める学習者の生涯にわたる学びを提供する

とあり、ただ外国から集まるカリキュラムをそのまま受け入れているのではなく、アブダビの文化を尊重した独自のシステムを創り上げています。

アブダビ流教育の大きなポイントはアラビア語と英語！

アブダビ流の教育における大きなポイントは「アラビア語」と「英語」です。アラビア語を母語とし、英語で学ぶ環境があるのです。

アブダビ流の教育における、アラビア語・英語の言葉は、

• アラビア語：
学生の教育の基本となる言葉。

• 英語：
世界基準の高等教育、就業など高いレベルで英語力を必要とする環境に十分対応するための言葉。

として考えられています。

また、公立校だけでなく、全ての私立校でも

• イスラム教育
• アラビア語
• アラブ首長国連邦の社会科

を教えることが求められています。

ここで注目したいのは「全ての私立校でも」という部分です。

公立校ではアラビア語で教育が行われていますが、様々なカリキュラムを実施する私立校でもアラビア語や社会科教育を行うことで、UAEで学ぶすべての子供達がアラビア語と国の歴史などを学ぶことになります。

この決断は、日本でも英語で教育を行う際に参考になるのではないでしょうか。

母語である「アラビア語」はUAEの子供達にとって基本の言葉

 アラビア語を母語とする生徒の場合、小学校から高校卒業までアラビア語は必須科目です。

小学1年生では週に4時間アラビア語の時間があります。私の子供達の場合は、幼稚園からアラビア語が始まりました。

また、アラビア語を外国語として学ぶ場合は、小学校から中学校卒業まで必須科目で、それ以降は選択制です。

小学1年生では週に3時間、英語でアラビア語を学びます。

UAEでイスラム教はいつから学ぶ？

イスラム教徒の場合は小学1年生から高校を卒業するまでイスラム教を学ぶ必要があります。イスラム教徒でない場合は選択制です。

UAEで社会科はいつから学ぶ？

UAE躍進の陰に、建国に際して偉人達の努力があったことを決して忘れてはなりません。

アラブ人であろうと、なかろうと、小学1年生から中学校を卒業するまで、社会科は必須科目です。

子供と一緒に家族も学ぶ、UAEの社会科

• アラビア語
• 宗教
• 社会科

…は学期ごとに2度の試験に加え、プロジェクトが多いのも特筆事項です。

日本なら夏休みの宿題になりそうな大きなプロジェクトを宿題としてたった1週間ほどで仕上げ、学校で発表します。

小学1年生の社会科では、

• UAEの偉人達
• 首長達
• 各首長国の地理
• UAEの家の今と昔の比較
• 国の産業

…などについても学んでいますよ。

UAEの家の今と昔を比べるプロジェクトの際には、近所のアルカッターラ　アートセンターへ子供とカメラを持って家族で調べに行きました。

ちょうどテントも張ってあったので、写真を撮り、子供は後日パワーポイントにまとめてクラスで発表しました。

▲昔は砂漠を行き交う生活をしていたUAEの人々。私たちの住むアルアインは水が湧き出ることから、昔から交易の重要地点として栄えたそう。その頃の家と言えば、こういったテントでした。今でも週末のイベントなどでテントは大活躍していますよ。

▲修復中の城壁（カッターラオアシスにて）

▲同じ敷地内にて、昔ながらの土壁の技法で建てられた現代建築。中はヒンヤリ、そして風が通り抜けるのが印象的！

▲ドアも美しい。

もし社会科の宿題がなければ、親である私自身もこんなに美しい土壁の建築についても知りうる機会はなかっただろうなと思うのです。

アラビア語だと何て言うのか、普段は教科書に出てこない新しい言葉の数々に、子供達も興味津々でした。

日本語でも、土壁って、見てみないと教える機会もないですし…家族みんなでする宿題も、なんだか良いかもしれないなと思いました！

家庭で話すアラビア語と学校で学ぶ共通アラビア語は全く異なる…公立校はちょっと大変！？

さて、UAEの学校では何語が使われるのでしょう。

UAEの公立学校では公用語である「アラビア語」で主要科目を学びます。近年のアブダビ教育委員会のカリキュラム改革で、英語にも力を入れているそうですよ。

最新鋭の設備と、学費が無料とあって、アラビア語を第一言語としている家族には最高の環境です。

▲アラビア語、社会科、宗教の教科書（アラビア語版）は公立、私立、そして全国共通です。

アラビア語と一口に言っても、アラビア語には色々あります。

たとえ、アラビア語が話せると思っていても

学校でもアラビア語で学習できる！　大丈夫！

というのは過信です。

普段家庭で話しているアラビア語は言わば方言のため、学校で学ぶ共通アラビア語とは全く異なるのです。

そのため、子供達のアラビア語のレベルをいかに保つかというのは、よくある悩みの一つなのです。

UAEの私立校は何語で学ぶ？

では、私立校の場合はどうでしょうか。

アブダビには様々なカリキュラムの学校があります。

例えば我が家の子供達が通うのはブリティッシュスクール。アラビア語と英語が同じくらいに流暢であることが求められています。

難易度が高いUAEの私立幼稚園の入園試験

実は、UAEの私立幼稚園の入園試験は結構大変です。

幼稚園から高校までの一貫校の入園試験は、アラビア語と英語の両言語での試験でした。

子供は、自己紹介に始まり、英語、アラビア語で図形や数といった算数の質問に答えていました。

家族の面接試験もあるとは聞いていましたが、アラビア語が話せないママは…私、正直ちょっとピンチでした！　今となっては笑い話ですが、夫の支えがあってこその、入園試験でした。

また、家族優先枠があり、兄弟がすでに同校で学んでいる家族が優先されます。幼稚園は10クラスもあるから大丈夫と思っていたら、大変。

アラブ式の名前は、子供本人、父親、祖父、曽祖父、そして最後に家族の名前と続きます。

家族優先となると、その一族が優先。

つまり、従兄弟が通っているだけでも、入園の優先枠に入れます。兄弟も、従兄弟も、いないという場合に、一般入試となる為、この入園枠はとても限られているのです。

入園願書を受け付けてくれるのも、たった一日の、そして数時間程度。なかなか狭き門でした。

“アラブ人としての誇りをもって、英語で学ぶ”ってどんな感じ？

長女の通う学校では、1学年10クラスのうち、アラビア語を母語とする「アラビッククラス」が9クラス。アラビア語を母語としない「ノン・アラビッククラス」が1クラスあります。

長女は幼稚園からGrade4（日本で言う小学4年生）現在までアラビック・クラスで奮闘中。クラスメイトは、UAE国民が8割。その他アラブ諸国出身の家族で、家でもアラビア語でお話をしている環境の子供達です。

先ほど記載したアブダビ教育委員会からの指針にあったように、アラビック・クラスに在籍する子供達は、アラビア語ネイティブとして

• アラビア語
• 社会科
• 宗教

をアラビア語で学んでいます。

アラビア語を母語、自分達の大切な言葉とし、上記3教科以外は全て英語で学んでいます。

▲小学４年生のアラビア語と社会科の２学期用の教科書です。一冊３００円程度と良心価格でありがたい！中はカラフルなイラストや写真が印象的です。

因みに、アラビア語を母語としない「ノン・アラビック」クラスは、基本的に海外で育った子供達や、両親がアラビア語を話さない家庭の子供達が在籍しています。

このクラスだと、アラビア語、社会科も含め全て英語で学びます。

何度、このノンアラビッククラスに長女を入れたいと思ったことでしょうか。アラビア語ネイティブのクラスは正直とても大変そう。

アラビア語と一口に言っても、授業で学ぶのはアラビア語の中でも共通アラビア語。

アラビア語の発音から、記述、読解に至るまで、とても厳しく学んでいます。アラビア語を第二言語として学ぶクラスはは、まずはアラビア語に親しむをモットーとしていることもあり、ずっと簡単そうに感じました。

そのため、

正直アラビア語の授業への負担が大きく、アラビア語を母語として学ばせるかどうか迷っている

と、学業アドバイザーにと相談したことがあります。

学業アドバイザーからは、

言葉は人格を作ります。

 

子供の才能は無限なのだから「これは難しそう」とか「簡単そうだ」と判断するのではなく、子供の将来をしっかり見つめて。アラブ人としての

• 誇り
• 優しさ
• 教養

を身に着け、英語で学ぶ。

 

世界のどこで暮らそうとも、きっとその子らしく、才能を十分に発揮して生きていけるのでは

と親身になってアドバイスを下さりました。

世界各国出身の複数の先生が担当する授業

長女の通うUAEの私立校はブリティッシュカリキュラムなので、基本的に全ての教科を英語で学びます。

• 英語
• 算数
• 理科
• コンピューター
• アート
• 音楽
• 体育

は英語で学びます。

先ほどのアブダビ教育委員会の指針にもあったように、

• アラビア語
• 社会科
• 宗教

はアラビア語で学びます。

また、全ての教科は同じテーマで、繋がりを持ちながらカリキュラムが構成されています。

担当の先生は、 小学１年生は英語、算数、理科を一人の先生が担当。

他の教科はそれぞれ専門の先生がいます。

小学3年生から英語が英語を専門とする先生に変わります。算数と理科は同じ先生です。

この変化は大きかったと感じています。カリキュラムでも算数と理科に力を入れているので、イコールとても面白い授業が実践されています。（この話はぜひまたの機会に本連載を通じてお届けします！）

また、4年生からは教科ごとに先生が変わります。日本の公立中学校・高校と同様、小学校から教科ごとの専門の講師から学ぶことになります。

▲UAEでは世界各国出身の先生から学ぶ機会に恵まれています。

これまでに、長女のクラスを担当した様々な教科を英語で授業する先生達の出身国は

• アメリカ
• 南アフリカ
• レバノン
• ヨルダン
• インド
• UAE

…と世界中から集まった先生達が担当してきました。

世界へ転校、転入可能！

外国人人口比率8割を超えるUAEでは、ご家族の仕事の関係で

• 海外への転校
• 海外からの転入

もよくある風景です。

長女の学校の場合、幼稚園から4年生で男女別になるまでクラス替えはありませんが、世界各国からの新しいお友達が増えるのは子供にとっても毎年楽しみな様子です！

海外からUAEの学校に転校してきた場合、何語で学び始めるの？

例えばカナダで生まれ育った従妹たち。

UAEに引っ越してきた時はアラビア語を話すことはできなかったので、ノン・アラビックのクラスでアラビア語を第二言語として学びました。

さて、一年がたった後にはすっかりアラビア語をマスター！　アラビック・クラスに変更して学んでいます。

今では英語かアラビア語で夢を見るそうですよ。子供の言語に対する柔軟性の高さには驚かされますね。

UAEの成績表はどんな感じ？

なお、ブリティッシュカリキュラムでは科目ごとに到達目標があります。

その子自身、どれだけ学びが深まったのかで成績として出てくるのが面白いところ。クラスの他の人と比べるのではなく、自分自身の学びの幅に評価がつきます。

また成績表を見ても、先生からのコメント欄大きいのも嬉しいところ。

• クラスでの様子
• お友達との様子
• 家族として子供をサポートするにはどうしたらいいのか

…等、先生からのアドバイスもあります。

例えば算数の先生からは、こんなアドバイスがありました。

長女は教わるより自分で教えたい派。グループ学習でも率先して自分で学んだことをお友達に伝えるのが好きな様子。家庭でも、どうかこの子に教えようとしないでください。

 

「この子から学びたい、ママに学校でやったことを教えて！」とそんな姿勢でいてください。

 

週末には出来るだけ色々な刺激を与えてください。例えば公園でも、図書館でも、ビーチでも、スーパーでだって学ぶことは可能です。

 

予算の範囲でお買い物の計算を任せてみたり、家族の一週間分の牛乳はどれだけ必要か…なんて質問はきっと彼女の眼を輝かせるはず

…かなり具体的だと思いませんか？

UAEの小学生は授業でどんなことを学んでいる？

▲写真は小学1年生の教室。幼稚園から高校まで全ての教室にスマートボードが設置されています。授業参観でも、皆が楽しそうにスマートボードを使いこなしていたのが印象的でした。

最後に、例えばUAEの小学4年生はどんなことを学んでいるのか、マンスリーの課題について具体例を出してみましょう。

今月の課題

• 英語：
  詩の朗読、俳句を含む３種類の詩を書いた詩集をつくること。
• アラビア語：
  100冊チャレンジ（100冊の本を読んで感想を記録に残すこと）。それから、自分で１冊の本を制作するのが課題。
• 理科：
  消化器官の働きを説明すること。
• 算数：
  様々な図形
• アート：
  マスクづくり（アフリカ、イタリア、日本のお面などそれぞれの国のマスク事情を調べて自分でも作ってみること）
• フランス語：
  色と種類。
• コンピューター：
  ロボットをデザインしよう

…などなどです。

大学まで無料！教育を国家の最重要項目に据えるUAEの学校教育：まとめ

実は、UAE はとても若い国です。アラブ首長国連邦というその名の通り、7つの首長国が結束し、45年前に独立しました。

初代大統領で今も「UAE建国の父」と国民から敬愛されているシェイク・ザイード殿下は、UAE独立に際し、いくつもの偉業を成し遂げられ、現在の国際的で豊かなUAEを築かれたのですが、殿下が最も大切とされたことが「教育」でした。

UAEでは、国の将来を担う子供たちの教育こそが国家の最重要項目とされています。また、学校と家庭とで連携をとり、子供達の将来を見据えた教育観点で鋭い視点で行われているように感じます。

▲UAE建国の父と呼ばれるシェイク・ザイード殿下が埋葬されているモスク「シェイクザイードグランドモスク」はアブダビにあり世界で6番目に大きいモスクとして知られています。

外国人比率が８割を超えるUAE。

この国に住む誰もが

UAEが好き！

と心から思っている幸せな国なのですが、さて、この一体感はどこから？　とは少し疑問に思っていたのですが、この記事を書いていて気づきました。

結論、大人達も子供達を通して学んでいるのですね。

子供達が学校で学んでくるUAEの社会科の知識が深く、面白い。

例えば

• 建国の歴史
• 偉人達の業績
• UAEの昔と現在

…など。子供達が家庭にもたらす知識が、私たち大人の心にも染み込みます。

学校教育というと、学校で学ぶことというイメージですが、周りにいる私たち大人も、しっかりのその教育を享受しているのだなあと気づきました。

また、この45年で急激な経済発展を遂げたUAE。

その背景には、こうしたUAEの歴史や文化への尊敬がしっかりと根付いているからこそ、新しくもたらされる情報や知識にも柔軟に対応できる社会になっているのですね。

日本でも、日本語と英語のバランスなどの議論に際しては、UAEの事例も参考にして頂けたらな、と思いました。

次回の連載記事では「子供達はいつも前向き！UAEの学校にいじめが存在しない3つの理由」についてお届けします！

参考：

• Abu Dhabi Education Council （ADEC） 
• 日本貿易振興機構JETRO　調査レポート　アブダビ・ドバイスタイル「暮Life」