世界中から優秀な人材が集まっているといわれているサンフランシスコでは、次世代のための新たな初等教育として、小規模・個別学習アプローチを取り入れた『Alt School（オルトスクール）』が人気です。

2013年にGoogleの元社員が創設し、年間の学費が約300万円であるにもかかわらず、今では全米10ヶ所に校舎を構えるほどの人気である個性的な学校についてご紹介します。

年齢別ではない少人数グループでの教育

Alt Schoolは各校舎80～150人ほどのマイクロスクールとして、4歳から14歳の学生を、小学校低学年、小学校中学年、中学校と大きく3つのグループに分類し、年齢に関係なく上限25人のクラス編成をしています。

少人数の学校にすることで、それぞれの生徒や家族、教師等の特別なニーズを汲み取り、大規模な学校では難しい柔軟な対応を可能にしています。更に子供たちは、大人のような多様な年齢・能力の環境で過ごすことにより年齢別、学年別では学べない社会性等が学習できます。

▲実験室にも、美術室にも変更可能なAlt Schoolの教室

学校には校庭や体育館がない代わりに地域全体の場所や人を活用するためのAlt Schoolネットワークを構築し、近隣にある体育館、科学館、図書館、博物館等の施設を頻繁に利用しています。週に一回は社会科見学があり、サンフランシスコ校舎では近くにあるウォルト・ディズニー・ファミリー・ミュージアムやミッション・サイエンス・ワークショップを訪れているようです。

これらは、学習はすべて教室の中で行われるのではなく、生徒が周りの専門家やコミュニティと接することにより、豊かな学習体験を得ることが目的で、公共施設が充実しているサンフランシスコでは、学校施設だけではできない多くの体験ができるのだろうと納得させられます。

昼休みにはクラスで公園を訪れてランチを食べて遊び、図書室の代わりに図書館を利用している姿を見かけると、街中が学校のようになり、地域社会も子供たちから良い刺激をもらいます。

各個人に用意された個別プログラム

もう一つ通常の学校と大きく違うことが、みんなで一つの教科書から学習するのではなく、すべての生徒にそれぞれ個別化されたプログラムが提供されることです。Alt Schoolでは経験豊富な教育者やビジネスでも有名なテクノロジー・リーダーが設立に携わり、この個別学習方法を構築しています。

▲最新テクノロジーを駆使したAlt Schoolの学校内部

Alt Schoolに入学すると、まず生徒本人や両親からの情報から得た各生徒の興味や情熱、強みに基づいて個別の学習計画が設計されます。四半期ごとに更新されるその学習計画の下で毎週行うべき個別のカリキュラムが組まれるのです。カリキュラムには、外部の学習リソースや個別グループでの作業、基本的なクラス単位の授業も含まれます。

授業では、例えばスタンフォード大学のデザインスクールで行われている世界でも一流の大学の講義と同じ内容や、プログラマーからウェブサイト構築方法を学ぶなど、次世代のために考えられた最先端のカリキュラムが用意されており、大人でも学習してみたいと思う内容が多くあります。

サンフランシスコから始まる新たな教育はどんな人材を生み出していくのか

新たな初等教育制度を生み出したAlt Schoolは、Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグの支援も受けて新たにニューヨークに校舎を作るなど、アメリカで急速に拡大しています。

まだ設立されて3年弱であるため、Alt School出身の子供たちがどう成長していくか前例がない中、2015年には200人の募集枠に3000人応募するなど多くの親が入学を希望しており、多様性が尊重されるアメリカならではだと驚きました。

初めて校舎を見たときは、小さな建物のように見えてこれが学校だとは信じられなかったものの、街中で生徒たちを見かけるたびに、おもしろそうだと興味を惹かれるようになりました。

今後この新たな初等教育がどんな広がりを見せ、世界にも受け入れられるのかどうか。また将来どんな人材を生み出して未来を変えていくのか、とても楽しみです！