世界の食料の不均衡を“根絶する”ということを目標に「肥満に悩む先進国」と「飢餓で悩む途上国」の問題の同時解決を目指す日本発の社会貢献事業「TABLE FOR TWO(以下、TFT)」。今回は、この7年間で2500万食の学校給食をアフリカの子どもたちに届けてきた同NPO代表で、アジアを代表する社会起業家、そして2児のパパでもある小暮真久さんにご登場いただだきました。
インタビュー後編では、なぜ日本人は、世界のリーダーになれないのか…日本の課題とアイデンティティー、小暮さんが未来を担う子どもたちに期待すること、これからを生きる人の「働く意味」について迫ります。
≫ [前編]今のグローバル教育は世界の半分しか見ていない…
地球規模の社会問題を解決する子どもを育てるために親ができること
世界を舞台に仕事をする小暮さんが「世界とつながる意識」を持たれたのは、いつ頃で、それはどんなきっかけでしたか?
早稲田大学の理工学部卒業後、人工心臓の研究のために、技術開発の進んでいたオーストラリアに留学してからです。4年間の留学生活で、いろいろな国の人のアイデンティティに触れて“違い”を目の当たりにしました。その違いと自分を照らし合わせることで、自分のアイデンティティ、引いては日本のアイデンティティについて考えざるを得なくなったんです。
オーストラリアでは、研究と並行して日本語講師のアルバイトもしていたのですが、そのアルバイトがとにかく忙しくて。というのも、アジアからの留学生がこぞって、第二外国語として日本語を選択するからです。日本の技術力に憧れ「いつか日本で仕事をしたい」と希望する外国人エンジニアの多さに驚かされました。
と同時に、技術力で一目を置かれ、国際社会のリーダーになれるはずの日本人が、リーダーシップを取りたがらないというギャップも目に付くようになりました。
たとえば、人工心臓が必要な患者さんたちに、その技術を届けるためには、医療機関とエンジニア、あるいは医者同士など立場が違う人たちを一つにまとめ、同じ方向に顔を向けさせることのできる「リーダー=プロデューサー」が必要です。
日本には、あらゆる分野でプロデューサー感覚を持った人が不足している。だから、届けられるはずの技術が届かないのだ、ということに気づき憤りを感じました。
「プロデューサーの不在」は、日本の課題であり、日本人として自分がどう生きるかの課題。一つのことを極める職人のような生き方よりも、人と人をつないだり束ねたりすることに喜びを感じる自分のアイデンティティを、世界とつながることに活かさなくてはと思いました。帰国後、自分にプロデュース力を身につけるため、当時はまだ知る人ぞ知るというコンサルティング企業だったマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社したのは、こういった経緯からでした。
なぜ日本人は、世界のリーダーになれないのだと思いますか?
英語と思われがちですが、英語は二の次です。ジャーナリストの故・筑紫哲也さんの英語は、ブロークン イングリッシュといわれていました。しかし、彼は日本人を代表して、各国の大統領と議論ができる。それは、彼が報道マンとして見聞きし、あらゆる分野の世界問題を情景として思い浮べながら対話することができたからです。
大切なのは語学力ではなく、グローバルな見聞を広げた上で持つことのできるイマジネーション力。ただ語学力だけあっても、イマジネーションの引き出しを持っていないのでは、対話になりません。
僕自身が英語を本気で勉強しようと思ったのは、大学1年の時、友人と1ヵ月のアメリカ横断旅行に出かけてからでした。話したいのに話せないことが悔しくて、旅行から帰ってすぐ、家の近くにあった米軍キャンプで、読み書きではなく、聞いたり話したりする英語を教えてもらいました。その後、大学時代は勉強そっちのけで世界を放浪しましたが、話したいことがあったから、培われた語学力だと思っています。