【北欧子育て】スウェーデンの夏休みは2か月!共働き社会でも長期休暇中に子どもが孤立しないための支援と地域の工夫とは?

長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー

スウェーデンの夏休みは約2か月。共働きが当たり前の社会の中で、すべての子どもが孤立せずに安心して過ごせるよう、各自治体や非営利団体が多様なアクティビティや制度を整備しています。食事支援、移動手段、無料の学び・遊びの機会まで──子どもが「夏休みって楽しい!」と感じられる社会のしくみを、現地視点からレポートします。

こんにちは! スウェーデン女王認定 認知症専門看護師/Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー長谷川佑子です。

共働きでも夏休みに子どもが孤立しない社会にいる子ども

日本では地域によって差はありますが、例年 7月19日〜22日ごろに終業式が行われ、約30日〜43日間の夏休みが始まりますね!

 

この約1か月の夏休み期間でも、多くの共働き家庭では、子どもの過ごし方に頭を悩ませながら、さまざまな工夫をされているのではないでしょうか。

 

実際に、日本人家庭を対象にしたリサーチでは、夏休みの預け先問題、6割が「困っている」 との最新の調査結果も出ているようです。

目次

スウェーデンの長い夏休み
すべての子どもが楽しむための取り組みはある?

日本の倍近く!?スウェーデンの夏休みは約2ヶ月!

スウェーデンで夏休みを過ごす子ども

一方、スウェーデンではどうでしょう。

 

実は、スウェーデンの夏休みは約2か月間と、日本の倍近い長さがあります。

 

この“なが〜い夏休み”の間、また、スウェーデンの家庭のほとんどが共働きという中で、どんな家庭環境にある子どもでも、孤立せず楽しい体験ができるよう、スウェーデンではさまざまな取り組みが行われています

 

今回は、「すべての子どもが夏休みを楽しむためのスウェーデンの取り組み」をテーマに、現地在住の視点からご紹介します。

サマーハウスで家族や親戚と過ごすのが伝統的なスウェーデンの夏休みの過ごし方だけれど…

スウェーデンの長い夏休みの過ごし方|伝統的にはサマーハウスに家族・親戚と滞在

前述の通り、スウェーデンの夏休みは今年もたっぷり2か月あります。

 

多くの親は4週間の夏季休暇(サマーバケーション)を取得し、家族と一緒に楽しい時間を過ごす家庭もたくさんあります。

 

スウェーデンの伝統的な過ごし方といえば、家族や親戚がサマーハウス(別荘)に集い、水浴びをしたり、ボードゲームを楽しんだりしながら、のんびりと過ごすのが一般的です。

 

しかし、現代のスウェーデンは人口の約2割が外国から来た移民で構成されている多文化社会でもあります。

 

また、スウェーデン人であっても、親戚や家族がサマーハウスを所有していないケースも少なくありません。

スウェーデンの長い夏休みが抱える大きな課題…子どもの昼食と遊び場の確保はどうする?

夏休み中の食費が家計を圧迫する理由とは?

夏休みを過ごすスウェーデンの子どもたち

スウェーデンでは

長い夏休みの期間中に子どもの昼食をどうするか」−−

という問題が、各家庭にとって大きな課題になっています。

 

ある統計によると、約半数の保護者──特に片親家庭では、

学校や学童に通わない夏休み期間中の食費に不安を感じている

と報告されています。

 

また、子どもの5人に1人(22%)は、夏休み中に外出することもなく、ほとんど自宅で過ごしているというデータもあります。

 

このように、家庭の経済状況や環境によっては、子どもが十分な食事や遊びの機会を得られない現実があるのです。

夏休み中に自宅でひとりきり──子どもたちが抱えるリスクとは?

夏休み中に孤独や困難な状況に陥っている子供

日本でも問題視されているように、夏休み中に人との交流がなく、楽しめる活動にも参加できない子どもたちは、孤独や困難な状況に陥るリスクがあります

 

これはスウェーデンでも同様です。

 

例えば、スウェーデンの子ども支援団体 BRIS(ブリス) は、夏休み期間中に子どもたちが以下のような問題に直面する可能性があると警告しています。

  • 孤独
  • 空腹
  • 暴力

また、こうしたリスクは経済的に困難な家庭だけに限られるものではありません。

 

スウェーデンでは共働きが一般的であり、保護者が仕事で家を空ける時間が長いことも、子どもがひとりで過ごす要因となっています

ほぼすべてが共働き家庭のスウェーデン
子どもの夏休みに親はどう向き合う?

ほぼすべてが共働き家庭のスウェーデンで子どもの夏休みに向き合う家族

スウェーデンではほとんどの家庭で両親ともに働いている「共働き世帯」が一般的です。

 

そのため、両親が夏季休暇を完全にずらして取得しない限り、子どもと一緒に過ごせる時間には限りがあります

 

そのため、

せっかくの夏だから、家族で過ごす時間も大切にしたい

と考えていても、2か月間ずっと子どもに“楽しい夏休み”を提供し続けるのは現実的ではないのが実情です。

 

小学校低学年の子どもであれば、親子ともに慣れている“学童保育”で夏休みの一部を過ごすことに抵抗が少ないため、活用しやすい傾向があります。

10歳を超えた子どもの「夏休みの居場所」どうする?共働き家庭の悩みとは

共働き家庭で夏休みの居場所がない10代の子供

しかし、10歳を超える頃になると、自宅でひとりでも過ごせる年齢とみなされ、夏休み中に学童を利用しなくなる子も増えてきます

 

実際、私の職場でも、毎年夏の休暇計画を立てる時期になると、同僚たちと夏の旅行の話だけでなく、

自宅で過ごす子どもをどう支えるか

についても自然と話題に上がります。

子ども向け無料アクティビティが充実しているスウェーデンの夏休み

スウェーデンの夏休みの無料アクティビティー参加中の子どもたち

楽しい夏休みの体験を求める子どもたちや、経済的負担の少ない活動を探す保護者にとって、安心して参加できる子ども向けアクティビティは非常に充実しています。

 

各市町村や非営利団体が主催するプログラムは、種類も豊富です。

たとえば:

  • スイミングサッカー柔道などのスポーツ系
  • 市が管理する農場での動物の世話(馬、牛、ウサギなど)
  • 小説執筆ゲーム制作といった創作活動 など

子どもたちの興味に合わせたアクティビティを探すことができます。

 

さらに、多くのアクティビティには、ランチやおやつが含まれており、無料で1週間参加できるものもたくさんあります。

 

これは、親にとってはとてもありがたいポイントです。

私が住むウプサラ市では、毎年夏のアクティビティ情報を以下のサイトで公開しています。

スウェーデン・ウプサラ市の子ども向けの夏休み中アクティビティ公式情報掲載サイト

アートも友だち作りもできる!
ウプサラの無料アート教室「kreativ verkstad – för er mellan 7-15 år i Uppsala」体験レポート

夏休みのアクティビティーを提供するスウェーデン・ウプサラ市のアート教室「kreativ verkstad(クリエイティブ・ヴェルクスタッド)」のサイト

▲夏休みのアクティビティーを提供するスウェーデン・ウプサラ市のアート教室「kreativ verkstad(クリエイティブ・ヴェルクスタッド)」のサイト

絵を描くことが大好きなわが家の娘は、昨年夏、ウプサラ市が提供するアート教室「kreativ verkstad(クリエイティブ・ヴェルクスタッド)」に1週間参加しました。

 

対象は小学生以上(7歳〜15歳)。


開催時間は午後13時から16時までで、おやつ付き・参加費無料という、親としてもありがたい条件がそろっていました。

 

このアクティビティは、地元で若者とのアート活動経験が豊富な2人のアーティストに市が委託して運営されています。

 

子どもたちとのコミュニケーションがとても上手なリーダーが中心となり運営されていました。

スウェーデンの夏休みに開催された無料アート教室での1週間|描く・遊ぶ・話し合う体験とは?

スウェーデンの夏休みに開催された無料アート教室で過ごすスウェーデンの子どもたち

参加した子どもたちは10人ほどで、多くは近所に住む子どもたちでした。

 

中には、夏休み中にギリシャからスウェーデンに住む祖父の家に来ていた子もおり、アクティビティの場ではスウェーデン語と英語が自然に入り混じる国際的な雰囲気でした。

 

初日は、それぞれが自分の好きな絵を描くことからスタート。

 

初めての顔合わせもあり、当初は緊張した空気が漂っていましたが、おやつの時間になると、トランプやダーツなどが始まり、子どもたちの表情が一気に和らいでいきました。

 

スウェーデンでは、保育園・学童・各種アクティビティにおける“おやつ”は、お菓子ではなく、リンゴやバナナなどのフルーツと、チーズやハムをのせたオープンサンドが一般的です。

オープンサンドのおやつ

「ほぼ食事」といえるおやつはみんなが満足するほど、たっぷりと用意されています。

 

アート活動は屋内だけでなく、天気が良い日は屋外でも行われます。

 

このときは「グラフィックアート」をテーマに、市から許可を得た公園の壁に文字を書くアクティビティも体験しました。

無料でおやつ付きで参加できるスウェーデンの夏休み子ども向けアクティビティ

さらに週の後半には、子どもたち全員でテーマを決めて、スプレーペイントの作品づくりにも挑戦

無料でおやつ付きで参加できるスウェーデンの夏休み子ども向けアクティビティ

アートを通じて、創造力だけでなくコミュニケーションや協調性も自然と育まれる1週間となりました。

夏休み中にアート教室に参加した子どもたちの反応と学びの場としての価値

アート教室の画材

アート教室では、小学生から中学生までの子どもたちが一緒になって、どんなテーマで一つの作品を作るかを話し合いました。

 

アートを楽しむだけでなく、年齢の違う仲間と意見を出し合い、それぞれが自分の考えをしっかり言葉にする機会となったのです。

 

話し合いは終始、和やかな雰囲気で進み、最終的にみんなで選んだテーマは「宇宙」でした

アートのテーマ「宇宙」

一週間の活動を通じて、子どもたちはすっかり友達になり、それぞれが「自分の想う宇宙」を作品として表現しました。

 

このアート教室は、創造力だけでなく、コミュニケーション力や協働性も自然に育まれる学びの場だと、改めて実感しました。


とても有意義な夏のアクティビティだったと思います。

子どもの移動の自由を守る──スウェーデンの無料バスカード制度とは?

サマーバスカードの仕組みと対象年齢

子どもの移動の自由を守る──スウェーデンの無料バスカード制度でどの子供も移動の自由を確保

▲スウェーデンは子どもを対象に6月〜8月末に無料バスカードが配布され、子どもの移動の自由が確保されます。

スウェーデンでは、7歳から19歳までの子どもを対象に、「サマーバスカード(夏の無料バスパス)」を無償で配布しています。

 

これは、6月から8月末までの期間限定で、県内の公共バスに何度でも無料で乗車できる制度です。

 

ひとりで公共交通機関を利用できる年齢とされる7歳以上の子どもたちにとって、行動範囲が大きく広がる仕組みです。

夏休みの移動手段が子どもの可能性を広げる

夏休み中の移動の自由を保証されているスウェーデンの子供

このバスカードがあれば、親の送り迎えがなくても、子ども同士で自由に移動できるようになります

 

経済的な理由で交通費の負担が難しい家庭でも、子どもが自分の意思で外に出かけたり、様々なアクティビティに参加するなどチャンスと可能性が広がります。

 

たとえ市町村がどれだけ魅力的で楽しそうなイベントやアクティビティーを無料で用意していたとしても、親が朝から仕事で移動手段がない場合、アクティビティに参加できない子どももいます。

 

だからこそ、「移動の自由」は、子どもにとってとても大切なことなのです。

 

一部にある否定的な声とその背景

一方で、この取り組みをめぐっては否定的な声も一部で上がっています。

 

例えば、ウプサラ市では近年、大人のバス料金が引き上げられたことを背景に、子どもへの優遇をよく思わない人もいることも事実です。

 

地元新聞では、この制度に対するさまざまな意見を紹介しつつ、

もしサマ-バスカ-ドがなかったら、子どもが友達と街はずれの湖に泳ぎに行きたくて無賃乗車をした子どもに罰金(約2万円)を要求することになるが、本当にこれは子どもが背負うべき問題なのか

と問題提起し、子どもに寛容な社会作りを記事に取り上げていました。

まとめ|すべての子どもに「楽しい夏休み」を届けるために

すべての子どもに「楽しい夏休み」

どの国にも、それぞれ異なる家庭環境で暮らす子どもたちがいます。

 

だからこそ、誰もが思いっきり遊ぶことができる子ども時代に、全ての子どもが

夏休みって楽しい!

と思える経験ができたらと心から願っています。

 

今回は、スウェーデンの長い夏休みを通じて、すべての子どもが楽しめるように工夫されている支援や取り組みについてご紹介しました。日本の教育現場やご家庭に参考になるヒントが一つでもあれば嬉しいです。

 

次回も、スウェーデンの子育てや暮らしにまつわるリアルな情報をお届けします。どうぞお楽しみに!

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記事をお読み頂きありがとうございました!

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長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
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ウプサラ

2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。

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