楽しく「政治」を学ぶアイデアに溢れるスウェーデン流「社会科」授業
子ども達に「政治」「選挙」「民主主義」を楽しく興味を持てるように教えるヒントが詰まっている授業のアイデアとヒント

長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー

今年9月はスウェーデンで4年に一度の選挙の年でした。

子どもの投票者教育 スウェーデン学校教育の場合

▲4年に一度のスウェーデンの選挙。夏のオリンピックより盛り上がるってホント!? 選挙小屋も大賑わい!

6年生の娘のクラスもたくさんの時間が

  • 社会
  • 政治
  • 選挙

の学習に割かれました。

 

子ども達はとても授業を楽しんでいるようだったので、スウェーデンではどのように「政治」や「選挙」学び、どのようなテストをしているのか、皆さまにシェアさせてください。

 

夏のオリンピックより盛り上がる!?
4年に一度の「スウェーデンの選挙」

小学生の主権者教育

4年に一度といえば「オリンピック」か「選挙」か。

 

スキーが得意なスウェーデン人は冬期オリンピックはおおいに盛り上がるのですが、サマーホリデー期間の夏のオリンピックの盛り上がりは日本ほどではなく、夏休みの後から始まる選挙期間の方が多くの人の関心を集め、議論が盛り上がっています

 

もちろん、小学校においても選挙の年はいつも以上に、各学年の理解度に合わせて

  • 選挙の仕組み
  • 民主主義

について学びます。


小学校6年生では、現在のすべての国政政党名、その代表者の名前を学びます。

子ども達が物語のキャラクターを知るように「政党名」や「代表者の名前」を覚えてしまうほど! スウェーデンでは子どもにとっても政治が身近

スウェーデンで使用されている小学6年生向け「社会科」の教科書

▲スウェーデンで使用されているLiber社の小学6年生向け「社会科」の教科書

娘は街に貼ってある政党ポスターを見かけては、

○○党首の○○党だね!

と少し自慢げに説明してくれました。

 

具体的に「政党名」や「代表者の名前」を知るということは、物語のキャラクターを知るように、より個人的な関心が湧きやすいものかなと思いました。

 

また、各政党が掲げている学校政策について学んでおり、多くの政党が

  • より多くの人員配置
  • 教員の教育

について子ども向けの討論番組で話しているのを聞いて、

みんな似たような政策だね。

なんて大人のようなことを言っていました。

政治家になりきって「社会問題」をディベートするスウェーデンの子ども達

スウェーデンの小学校で行われる「選挙」「民主主義」「主権者」教育

小学校6年生の授業ではグループで1つの政党を選びその党の政策について調べます

 

そして、自分たちのグループがその政党の党員になったような形で、他の政党を選んだグループと「社会問題」についてディベートをしていました。

 

例えば「環境問題」についてそれぞれの意見を話し合います。

政治家に会ってリアルに質問&議論!? スウェーデン政治にコミットする「社会科」授業

その後、選挙活動をしている実際の政治家たちに会いに行くという授業もあります

スウェーデンでは社会科の授業の一環で選挙小屋へ政治家に直接会って話を聞くということも行われる。

▲スウェーデンでは社会科の授業の一環で「選挙小屋」へ足を運び、直接政治家に会って質問をしたり議論をするということも行われる。

選挙期間には各政党が自分達の政策について話しをする「選挙小屋」が街の中心に立ちます

 

誰でもそこへ行き政策を聞いたり議論したりと市民の政治参加の場となっています。

 

6年生の子ども達は授業の中でその小屋へ行き、質問をしたり議論をしました

 

各政党はコーヒーやお菓子などを用意して議論することを待っているので、授業の時間に思わぬお菓子のプレゼントをもらって、

○○政党も悪くはないな

などと言っていました(笑)

将来の国の強さにつながる
社会問題を真剣に話し合っている大人の姿を子どもたちが触れられる環境づくり

政党小屋には、自分達の

  • 学校の先生
  • 友達のお母さん
  • 近所の人

が政治家としていることも珍しくありません。

スウェーデンの選挙

スウェーデンの地方議員は、自分の仕事をもちながら政治家をしているので、まるで、自治会の役員のような、より生活に近いところで活動しています。


身近な大人の政治意見が子どもに影響することが、良くも悪くもあるとは思いますが、大人が自分たちの社会問題を真剣に話し合っている姿を子どもたちが目にし、成長していくに連れて、多くの意見を聞きながら、自分の意見をつくっていけることが、将来のこの国の強さになるのではないかと感じました。

「新政党の旗揚げ体験」「政策発表」「模擬選挙」を社会の授業で実体験するスウェーデンの政治教育

「ピース党」「トマト党」「パンを焼く党」どの新党がクラスメートの支持を集められる!?

さらに授業ではグループごとに「政党」を作り「政策」を発表し、クラスで「選挙」をしていました。

 

中学生や高校生だと実際の政党に投票をしてみるような模擬選挙を学校内で行うことがあるそうですが、娘のクラスでは自分たちで作った政党へ「模擬選挙」をする体験実習をしていました。

 

娘のグループは女子2人+男子3人の5人グループで模擬選挙のための「新政党」をつくっていました

 

女の子2人は戦争がない世界を作るための公約を提案し、政党名を「ピース党」としました。

スウェーデンの学校で行われている社会の授業での主権者教育

▲6年生社会科の授業で行われた模擬選挙の体験学習で、女子2人は新政党として「ピース党」を提案。政策は「戦争がない世界を作る!」

しかし、男の子たちは、休み時間を長くするという政策提案し、政党名はインパクト勝負の「トマト党」がいいという意見を持っていました。

スウェーデンの学校で行われている社会の授業での主権者教育

▲男子は「トマト党」を提案。政策は「休み時間を長くする!」

娘は

政治とトマトなんて関係ない…

と嘆いていましたが、グループ内の多数決で男の子の提案したトマト党がグループの政党となり、政策も決まりました。

 

図工の時間にはグループで決めた政党のポスター作りをしていました。

 

その後、グループごとに政党政策発表会をして、クラス選挙をします。

 

クラスでの選挙では貧しい国の子ども達に食料支援をすると言う政策を掲げた「パンを焼く党」が多くの票を獲得していました。

スウェーデンの学校で行われている社会の授業での主権者教育

▲模擬選挙で最も支持を集めたのは「パンを焼く党」。政策は「貧しい国の子ども達への食糧支援」。

スウェーデンでは、普段の授業でも、自分の意見を述べる機会が多いので

  • 自分達で政策を生み出すような創造力
  • 他の人へ理解してもらうようなコミュニケーション能力

を伸ばしているように思います。

 

また、いろいろな価値観、文化、立場の人が暮らすこのスウェーデン社会で生きていくためには必要な力なのだと感じます。

子ども達に「政治」「選挙」「民主主義」に楽しく興味を持てるように教えるにはどうしたらよい? スウェーデンの「社会科」授業は楽しく学ぶアイデアに溢れている!

楽しく「政治」を学ぶアイデアがスウェーデンの社会科教育には詰まっています。

▲楽しく「政治」を学ぶアイデアが詰まっているスウェーデンの「社会科」の授業。生活の中での困りごとが政治によって解決できる社会であるとうことを子ども達が実感できるような授業展開は日本の未来の社会科授業の参考になるかも!?

私達は子ども達に「政治」や「選挙」について、さらには我々の生活のベースである「民主主義」について、楽しく興味を持てるように、かつ、きちんと正しい情報を子どもでも分かるように話しをすることはできるでしょうか。

 

どのような社会システムの中で暮らしいるのかを幼少期から学ぶことは、

生活の中での困りごとが政治によって解決することができる社会である

と、子どもが知ることで、大人への信頼社会への期待にも繋がるとても重要なことだと思います。

 

しかし、親が教えるのはとってもハードルの高いテーマでもありますよね。

 

今回ご紹介させていただいたスウェーデンの学校で行われている社会科授業のように、

  • リアルに存在する政党の政治の内容を党員になりきってディベートしてみる
  • 政治家になりきって模擬選挙を行ってみる
  • 子ども自らが擬似的に新政党を旗揚げし、政策・公約を練ったりディベートを行う
  • 模擬選挙で実際にグループ対抗で戦ってみる
  • 実際に活動している政治家に直接質問を投げかけたり議論をしてみる

…などを通じて多角的な体験学習が行われていることこそ、“夏季オリンピックよりも盛り上がる”ほどに「政治」「選挙」に興味を持つ主権者を育てることに成功している「スウェーデン流の教育」の秘訣なのかもしれません

 

「政治」「選挙」「民主主義」を体験型で実学する教育メソッドは、小学生でも段階的に、主体的に社会の仕組みを学ぶことができるため、主権者教育の一つのあり方として効果的なのではないかと思います。

 

本記事の最後になりますが皆様には実際にスウェーデンの小学6年生が解いている「社会」のテストをためしてみていただこうと思います。

 

どれくらいしっかりと答えられるでしょうか? ぜひ、親子でチャレンジしてみてくださいね!

超難問も!? 日本の大学入試レベルも超えている!?
スウェーデンの小学6年生の「社会」のテストを試してみよう!

※テストは各学校の教科担当教員によってつくられています。

スウェーデンの小学6年生向けの社会科テスト

  1. 「民主主義」という言葉の意味は?
  2.  「直接民主制」と「間接(代理)民主制」の違いを説明しなさい。
  3. クラス代表(クラスの学級委員のような子が他の学年やクラス代表と決めごとをする係)会は「民主主義」の一部ですが、それはどうしてそのようにいえるでしょうか。
  4. スウェーデンの基本法(日本の憲法のような法律)とは、何でしょうか? その中の一つについて説明しなさい。
  5.  議会にはいくつの専門委員会がありますか? 議会の仕事を3つ挙げなさい。

  6. どこの政党が保守的政党でしょうか?
  7. どこの政党が社会主義的政党でしょうか?
  8. 「君主制」とはどのようなものでしょうか?
  9. 「共和制」とはなんでしょう?
  10.  「独裁体制」とはどのようなものでしょう。そのような国を例に挙げて説明しなさい。

  11.  子どもは他者の影響を受けやすいものです。子どもたちはどのように自分の意見を示すべきでしょうか? 他者があなたの意見を聞くためにはどのようにしたらいいでしょうか。説明しなさい。
  12.  学校での成績は何年生からつけられたらいいと思いますか? どうしてそのように思いますか?
    (スウェーデンでは、成績は小学校高学年からつきます。その成績で中学校が選択できるというわけではありません。どのくらい学習を理解しているのかを表すための成績です。)
  13.  「民主主義」について、授業で何を学びましたか? 勉強する前から知っていたことは何ですか? スウェーデンがどのようにまとめられて、進んでいけるとよいと思いますか、あなたの意見を書きなさい。

記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
ウプサラ

2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。

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