3年間のイタリア暮らしで特に印象に残った「イタリア流子育て」4つのポイント[最終回]

佐々木希世(Kiyo Sasaki)
Glolea! イタリア子育て&生活エンジョイ・アンバサダー

こんにちは、イタリアから最近の話題をお届けします!

 

…と言いたいところですが、ご報告があります。我が家は子供達の学年末を最後に3年間過ごしたイタリア生活に別れを告げ、後ろ髪を引かれつつ帰国しました。

 

日本に戻って1ヶ月あまり。今回はイタリアで過ごした日々を振り返って特に印象に残った点をお話ししたく思います。

ポイント1:
イタリアは本当に子供に優しい国であること

イタリア流子育てポイント1

イタリアは本当に子供に優しい国であること−−これはイタリアに来てからの第一印象でもあり、本当に最後まで変わることがありませんでした。

子供は国の宝、より良い将来を育むための種

と、イタリアでは誰もが思っているのです。

 

さらに、これは大人たちに限ったことではありません。

 

反抗期のティーンエイジャーや、小学生さえも、自分より歳が下の子供たちに対しては優しく接し、必要があれば助けの手を差し伸べることが当たり前に行われます。自分より小さいもの、弱いものは守ってあげるのが当然と思っているのでしょう。

 

そのほかにも、これは私自身の推測でもありますが、歴史の長いイタリアでは誰もが

自分は長い歴史の中で一つの役割を担っているに過ぎない

と頭の片隅で考えているように思えます。

 

それがきっと無意識のうちに、次世代を担う役割を持つ子供達を大切にし、優しくバトンを渡そうという態度となって現れるのかもしれません。

ポイント2:
「みんな違って、みんないい」を真に実現していること

イタリア流子育てポイント2

この連載の中で、何度も繰り返しお伝えしてきたことでもあります。

 

見た目や人種の違い、能力の差、障害の有無、こうしたことに偏見を持たずに接するイタリア人の姿勢には、いつも背筋が伸びる思いがしました。

 

しかも、その「姿勢」を持っていることすら意識しない、イタリア人ならではの伸びやかさ、てらいのなさは、私自身も持ちたいとイタリアに暮らし始めてから強く意識するようになりました。

 

そして多様性が当たり前になる、これからの時代に生きるうちのチビ達にも身につけて欲しいあり方だと、帰国した今でも思っています。

 

また、イタリアは個性あふれる人たちの宝庫! その秘密は褒めて、褒めて、褒めまくる子育てにあります。

Bonissimo!  / すごいじゃない!

Bravissimo! /すごく上手よ!

Che Bello! / なんて綺麗なの!

Meraviglioso! /素晴らしいわ!

…等。

 

挙げ始めればきりがないこれらの褒め言葉のシャワーをハグやキスとともに浴びせかければ、子供たちが自信や誇りを持つようになるのは当たり前ですよね。

 

それは褒められてもみくちゃにされながらも、嬉しそうな表情を浮かべる子供たちの顔から容易に見て取れます。そうしてそれが

私はこうありたい

というユニークな自我や個性の確立につながって行くのでしょう。

ポイント3:
イタリア人はおしゃべり!

イタリア流子育てポイント3

イタリア人といえば! の「おしゃべり」もそうです。

 

学校や幼稚園の授業で、また課外活動で異年齢の交流を積極的にさせるイタリアでは、子供が臆さずに大人と「タメ口」で渡り合う場面をよく見ます。

 

もちろん他愛もない雑談であることがほとんどですが、大人も子供の言うことだからと手を抜かずに、おしゃべりに高じているのです。

 

たかがおしゃべりですが、自分の考えを人に伝え、それが真剣に聞いてもらえるという経験も、子供の思考や個性の形成において大切。イタリア人の大げさな身振り手振りを交えたおしゃべりを聞きながら、そう感じたことも多くありました。

ポイント4:
愛情だけは「手抜き」しないこと

イタリア流子育てポイント4

のんびりしていて、いい加減というイメージもあるイタリア人。

 

実際その通りの一面もあって、ちょっと目を離すと嫌な仕事から逃げてしまったり、遅刻したり、サボったり、ということもあります。

 

学校でも家庭でも手抜き育児が満載で、

あ、あれ持ってくるの忘れた

サイズが合わない? 色が違う? でも、とりあえず似たような物があればいいでしょ

なんていう発言が親から出るのは日常茶飯事

明日は祝日の谷間だから、学校も休みにしちゃいます

などと学校から連絡が来たことも(!)ありました。

 

そんなイタリア流育児でしたが、それでも一つだけ絶対手抜きをしないことがありました。それは子供に注ぐ愛情の量

 

履かせた靴下の柄が片足ずつ違っていても、お迎えの時間ギリギリで幼稚園に滑り込んでも、家族中寝坊して朝ごはん抜きで登園しても、送り出す時と迎えに行く時には必ず抱きしめてキスをする。

 

ママだけでなくパパも、先生も、近所のおじさん・おばさんも同じです。

 

さらに素晴らしいと感じたのは、どんな時でも優先順位は子供にあり、ルールの方は曲げても良いというスタンスを誰もが持っていたこと

 

家庭なら我が子の、学校の先生ならそれぞれの子供の状態をよく見て、必要ならばルールを曲げても子供に重要だと思うことを優先するのです。

 

それは我が家の長女が学校に馴染めず、数ヶ月間もの「慣らし保育」をさせてくれたことからもよくわかります。忍耐強く話を聞き、見守る。これは一人一人の子供を知ろうと努め、愛情を持って接しなければできることではありません。

 

夏のバカンスをはじめ家族単位の行動が多いイタリア人家庭ですが、住みはじめた当初は、子供がティーンエイジャーになっても家族と行動を共にすることを不思議に感じていました。

 

けれど実際にコミュニティの一員になってみると、イタリアの「ファミリー」の土台がいかに多くの愛情によって築かれているか、親子の信頼関係・絆がどれほど強いものかが良く分かったのです。


もちろんここまでに書いて来た印象深い点にはデメリットもあることでしょう。

 

個性が強すぎる人たちをまとめるのは大変ですし、特に男性はなかなかマンマから離れられないと言う人もいます。けれどこれらの要素こそが、イタリア人という伸びやかでありながら繊細で、大胆で、個性的で愛情深い人たちを育てるのだなと、私は羨ましく思うのです。

 

日本人ですから全てをイタリア流にすることはできませんし、それが良いことだとも思いません。けれど3年間暮らした中で心に染み入ったこれらのことを、これからの子育てに、生活に活かしていこうと心に誓っています。

 

日本に戻ったこのタイミングで、一旦この連載は終了です。

 

拙い文章と、ドタバタな生活の記録をお読みくださった皆様、有難うございました。

 

“Bocca al lupo!”とは、日本語で言えば「幸運を!」。イタリアを出るときにたくさんの人たちからかけて頂いた言葉です。子育て中の仲間である皆さんにも同じ言葉を贈りつつ、筆を置きたく思います。

 

Bocca al lupo!

記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

佐々木希世(Kiyo Sasaki)
Glolea! イタリア子育て&生活エンジョイ・アンバサダー
ミラノ

14年8月に、イタリアはミラノに居を移す。2人の子供達を追いかけ回しながら、日本とは違う時間の流れの中でのイタリア生活を満喫中。学生時代の専門だった美術をはじめ、食事・お酒を愛する身には最高の住環境! 子育て周りをはじめ、そんなところもご紹介したいと思っています。著書『「半径5メートル最適化」仕事術 おしゃべりな職場は生産性が高い』好評発売中!

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