1歳からの子どもの性教育★スウェーデンの保育園ではどうしてる?[1〜6歳編]
シリーズ:子どもを狙う性犯罪から自分を守る vol.1

長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー

こんにちは! スウェーデン女王認定 認知症専門看護師/Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー長谷川佑子です。

 

日本でも感心が高まっている「子どもの性教育」。

スウェーデンの保育園や学校で資料として配布されてる保護者向けの性教育資料「stopp! min kropp!(ストップ!私のカラダだよ!)」

スウェーデンの「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が保育園や学校に資料として配布している保護者向けの性教育資料「stopp! min kropp!(ストップ!私のカラダだよ!)」表紙。

 

私は日本及びEUの看護師免許を持ち、現在は、スウェーデンで多くの高齢者と接する看護師として働く2児のママでもある立場にあります。

スウェーデンの夏休み。森の中のサマーハウスで毎年遊びにくる鴨に餌をあげている娘たち。

▲森の中のサマーハウスで毎年遊びにくる鴨に餌をあげている娘たち。

そのため、スウエーデンの教育&子育てというトピックの中でも、特集として「スウェーデンの性教育」「人生100年時代のウェルビーングと教育」についてシリーズとしてお届けできたらと常々思ってきました。

 

今回は、特に保育園に通う未就学児(1〜6歳)のお子様をお持ちの保護者様や保育関係者様向けに、

スウェーデンの保育園では「いつから」「どのように」子どもに性教育を始めるのか

を主軸にお話を進めていくことができればと思います。

目次

1歳から始まる!? スウェーデンの「子どもの性教育」

1歳からの子どもの性教育

子どもに良い人生を送ってもらいたい

と願い、

多くのことをやってあげたい

側にいて最善の道を整えてあげたい

と思うのは親なら当然です。

 

しかし、子どもが周囲から大切にされ、その子らしく生きていくためには、子ども自身が周囲とのコミュニケーションをとり、自分の感じることをうまく伝えて、他者へも耳を傾け、よき人間関係を築いていくことこそが、心身ともに安全で安心のある輝ける人生を歩むことへつながるのではないでしょうか。

 

スウェーデンの保育園では、

  • カラダ
  • コミュニケーション
  • 人権
  • 性犯罪予防への学び

を、1歳からはじめます。

 

未就学児の小さな年齢の子ども達に対して、どのように「性教育」を導入しているのでしょうか。

子どもとカラダについて話そう!
カラダの大切さを日常的に話すスウェーデンの保育園

カラダの大切さを日常的に話すスウェーデンの保育園

子どもは自分のカラダにも、他の人のカラダにもとっても興味があり、それは自然なことです。

 

カラダについて知ることは、早すぎるということはありません

 

自分のカラダを知り、それが家族から大切にされているものだと感じると、

  • 何をして良いのか
  • 何が正しいのか

を理解し

自分のカラダもお友達のカラダも大切にすること

を学びます。

 

スウェーデンの保育園では子ども同士が、カラダを叩くなど不快なことをしないことを教えるためにも、カラダの大切さについて日常的に話しています

カラダの大切さを知ることは「いじめ」の防止という視点でも大切な学びだ

と保育士は話していました。

ご家庭ではいつからどのように「子どもの性教育」を始めると良い?
日々の自然な暮らしの中で話すタイミングをみつけよう!

バスタイムは子どもの性教育にピッタリの時間です

▲バスタイムなど習慣的な普段の暮らしの中でカラダの部位名称や、プライベートゾーンについて教える時間を作ることができると、多くのご家庭で自然な流れでカラダについての勉強を始めやすいかもしれません。

いつから、どのように、未就学児の小さな子どもにカラダについて話しはじめたらいいのでしょうか。

 

特別な環境を作らなくても大丈夫。安心できる環境である普段の生活の中で話しはじめると良いでしょう。

 

例えば、おむつを替え、お風呂に入った時にカラダの部分について教え、どこがプライベートゾーンなのか、理解度に合わせて、具体的に子どもになじみのある呼び方で部位名称も教えつつ、自然に会話の中に入れていくことがよいです。

スウェーデン「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が配布している子ども向けにプライベートゾーンを説明する性教育資料

スウェーデンの「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が配布している子ども向けの性教育資料「Alla bestämmer över sin egen kropp(Everyone is in charge of their own body)」より。

子どもへの性教育はできるだけオープンに楽しく話すことが重要!

大人があえて曖昧な表現をしたり、隠すことで子どもがカラダについて話てはいけないことだと感じてしまうこともあります。

 

できるだけ、オープンに楽しく話ができるといいでしょう

人生100年時代のウェルビーイング
健康で豊かな人生を送るためにも大切な「自分のカラダを知ろうとすること」

スウェーデンの保育園では、具体的に、年齢に合わせてどのように「性」や「カラダ」について教えているのでしょうか。

幼児:1歳児の場合
カラダの部位について学び始める年齢

保育園の1歳児クラスではカラダの 部位について分かる人形や絵を使いながら話をしています。

みんなとても興味を示す

と先生はおっしゃっていました。

幼児:4〜5歳児の場合
自分で自分を守れるように性犯罪の危険についても学び始められる年齢

子どもが4、5歳になりより理解力が高まってきたら、少し性犯罪の危険について話を始めてもいいと言います。

世の中にはあなたのプライベートゾーンを見よう、触ろうとする大人がいるかもしれないから、何かおかしいと感じたら言ってね。

と、いつでも対応できる準備があることを伝えておくことや、子どもが感じた小さな不安も話してくれたり伝えるチャンスに繋がり、犯罪に巻き込まれる前に守ることができるかもしれません。

高齢者の場合
ウェルビーイングのためのセルフケア世代

余談ではありますが、私はスウェーデンのケアホームに看護師として勤務しているため、日々高齢者に接する立場にあります

 

そして、自分のカラダを知ろうとし、日々自分で自分をケアできる人こそ、健康で豊かな、長い人生を送れていることを見ています。

 

小さな時からカラダに興味を持てるように親子で話し、カラダの変化に気が付けるようにすることは、今後の長い健康生活を送る上でとても重要なことだと思います。

嬉しい! イヤだ! 今どんな気持ち?
「感情」を学ぶことの重要性

多文化・多言語共生の共働き社会のスウェーデンでは遊びなどを通じて「感情」について学ぶ

みんなが働くこと、勉強していることが当たりまえのスウェーデン社会では、専業で家事をしている人はほとんどいません。

 

多くの子供が1歳から1歳半で保育園に入り、日中集団生活しています。

 

スウェーデン語を話す両親を持つ子どもだけでなく、母親父親が別々の言語を話しり、自宅と保育園での言語が違う子どもたちもたくさんいます。

 

子どもの言語発達は非常に違いがあり話し始める年齢も違います。

 

なので保育園でのコミュニケーションは言語以外での方法も非常に大切にしています

その中でも、

  • 嬉しい
  • 悲しい
  • 怒っている

などの「感情を伝えること」を、どの保育園も子ども達が理解できるように遊びを交えながらも行なっています

 

自分から湧き出る感情を自分が気づくことは、発達に大切なことです。

 

その感情をコミュニケーションとして適切に伝える能力を伸ばし、人間関係を築いていくことが、社会で生きるなかで必要な力だからです。

子どもにとって「違和感」や「性犯罪の予兆」は言語化しにくい…「感情」を理解し相談できる能力を養い危険を早期発見!

子どもを性犯罪から守るために感情について学ぶ

また、子どもの

  • いやだな
  • おかしいな

という感情をきちんと理解して心地よくない感情に対して誰かに相談できることは危険の早期発見にもなります。

 

子どもの感じる

  • 違和感
  • 性犯罪一歩手前の状況

は子どもが言語化しにくいこともあるので、子どもが

私/僕が感じていることを大人に伝えていいんだ!

と、安心して伝えられる環境をつくることも重要です。

 

感情の学びは、健全で強い自我を育むだけでなく、他者への共感を生む絶好の機会でもあります。

 

自分の価値を知っている子は、他者の価値もよく理解できるからです。

みんなちがって、みんないい!
子どもも守られるスウェーデンの「人権」意識

子どもの権利を守を守る

▲スウェーデンでは「子どもの権利」についても小さな頃からはっきりと大人が言語化しています。

「人権」を聞くと、何だか堅苦しいように聞こえますが、スウェーデンで「人権」は当たり前に生活の中にあるもので、誰もが互いを尊重するために守り、守られるものという認識です。

 

さらに、「子どもの権利」についても小さな頃からはっきりと大人が言語化しています。

 

例えば

  • どんな子どもであっても皆等しく扱われること
  • 大人が子どもの意見に耳を傾けること

などです。


 
スウェーデンの教育では、子どもに

どんな大人に対しても自分が嫌だと思う気持ちをきちんと表し伝えていい

と、推奨しています。

 

例えば親の友人や近所の人が気軽に子どもの頭をなでることや、カラダに触れるという場面があるかもしれません。

「やめて!僕/私のカラダだよ!!」
と言葉にして良いと伝えることの重要性

スウェーデン「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が配布している子ども向けの性犯罪を未然に防ぐための説明をしている性教育資料

スウェーデンの「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が配布している子ども向けの性教育資料「Alla bestämmer över sin egen kropp(Everyone is in charge of their own body)」より。

それは、なにも性的な意味は含んでなく単なる挨拶だとしても、もしそれを子どもが不快と感じれば

やめて。

と言っていいのです。

 

子どものカラダについて決定するのは本人であり、子どもも含め全ての人が、その決定を尊重されるべきだということを教えます。

子どもは親のものではなく、一人の人としてすでに価値のある存在だ

という社会の価値観は、どの子ども自分らしく生きられる、自律性のある大人になるチャンスの多い環境ではないでしょうか。

 

全ての人のウェルビーイングを考えるときには、互いを尊重する人権というものが大切です。

「表情」「態度」非言語コミュニケーションも使いながら『コミュ力』を育む

子どもは家族や周囲の人とのコミュニケーションの中で、多くのことを学びながら成長していきます。

 

言語だけでなく「ジェスチャー」や「ミミック※」のような非言語的コミュニケーションは子どもとってとても重要なものです。

※ミミックとは:他人の動作・言葉などを模倣/擬態すること。

 

表情や態度は多くの情報を相手に伝えるからです。

コロナ禍でも保育・教育現場でマスク着用を勧めなかったスウェーデン政府が国民に与えたメッセージとは?

発達段階において「表情」が見えることの重要性

新型コロナ禍でも、スウェーデンでは保育園や小学校でのマスク着用を勧めなかったことは、他の国とは違った政策でした。

スウェーデンはコロナ禍中、ロックダウンもマスク着用推奨化も行われませんでした。

▲スウェーデンはコロナ禍初期から一貫してロックダウンもマスク着用の推奨化も行われませんでした。

しかし、当時のスウェーデン政府は

先生も子どもを互いに表情が見える、子どもの発達にとってよりよい環境で保育、教育を続けていく

という強いメッセージを国民与えました。

 

スウェーデンの保育、幼児教育は、先生が何を教えるか、子どもがどんなことができるようになるかよりも、先生は一人一人の子どもといかによいコミュニケーションをとるかを考えており、子どもがいろいろな方法を使って表現する力を伸ばすことを重視しているように思います。

それぞれの子どもに合った方法でコミュニケーションを行うスウェーデンの保育士の対応事例

以前、私の長女が毎日保育園に着くなり、先生の膝に座るのを見た日本人祖母が、

うちの子だけ先生と一緒で不公平だし、きっと迷惑なので、やめさせるよう先生に話した方がいい

と言いました。

 

確かに、我が子はいつも先生のお膝を独占状態です。

 

このことを保育士に相談すると、

全ての子どもが膝を必要としてはいないし、保育士の膝にいることで安心して生活を送れているから、長女が望むのであればいい

と言いました。

 

大人がそれぞれの子に合った方法で、安心できる環境をつくってコミュニケーションすることこそが、子どもが愛されていることを充分に感じられ、心身ともに穏やかに成長できるための重要なことであると思います。

子どもの性教育★スウェーデンの保育園ではどうしてる?[1〜6歳編]:まとめ

スウェーデン「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が配布している子ども向けに「性犯罪帽子」や「人権」について説明をしている性教育資料

スウェーデンの「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」が配布している子ども向けの性教育資料「Alla bestämmer över sin egen kropp(Everyone is in charge of their own body)」より。

子どもへの

  • カラダ
  • コミュニケーション
  • 人権
  • 性犯罪予防
  • ウェルビーイング

を学ぶことは、多くの危険から自分のココロとカラダを守ることに役立ちます

 

残念なことに、世界には力や立場の弱い子どもに対する暴力や性犯罪が存在します。

 

親としてはそのような社会の暗い部分を子どもに教えることは気が引けますし、難しいです。

 

けれども、子どもたちが人生を壊されないためにも、きちんと年齢にあった学びを子どもたちにして、輝く未来を送れるように大人が考えていく必要があるでしょう。

 

次回は子どもを狙う性犯罪から自分を守る vol.2「小学生の性教育★スウェーデンではどうしてる?[7~10歳編]」をお届けします! お楽しみに。

 

子どもを狙う性犯罪から自分を守る:
シリーズ・バックナンバー

記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
ウプサラ

2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。

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