スマホ脳と子どもの脳・メンタルへの影響とは?スウェーデンのスクリーンタイムガイドラインと家庭でできること
スウェーデンに学ぶ デジタル時代の子ども・学び・ウェルビーイング vol.3
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
北欧スウェーデンでは、ベストセラー『スマホ脳』をきっかけに、スマホやタブレットが子どもの脳と心・体の健康に与える影響が大きなテーマになりました。本記事(vol.3)では、精神科医アンデシュ・ハンセンが指摘する「スマホ脳」のリスクとドーパミン・報酬系への影響、WHOのスクリーンタイム指針、スウェーデン公衆衛生庁による0〜2歳/2〜5歳/6〜12歳の年齢別スクリーンタイム目安をわかりやすく整理。さらに、学校のICT教育より深刻な個人スマホによる長時間スクリーンタイム問題や、運動不足・メンタルヘルスへの影響も紹介しつつ、「スマホ脳」から子どもを守るために家庭でできる具体的なルール作り(就寝前ノースマホ・食事中のデジタルオフ・共同視聴など)を、スウェーデンの議論と実践事例にもとづき解説します。
目次
子どもの「スマホ脳」とスクリーンタイム|健康・睡眠・メンタルへの影響
コロナ後に急増した子どものスクリーンタイムとスマホ脳への懸念

こんにちは! スウェーデン女王認定 認知症専門看護師/Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー長谷川佑子です。
コロナパンデミックをきっかけに、世界中でオンラインやデジタルへのアクセスが日常生活に一気に浸透しました。
その少し後から、スウェーデンでは
子どものスクリーンタイム(画面を見る時間)について、適切な時間を明確にすべきだ
という意見が強くなっていきます。
背景には、スクリーンが子どもの健康や脳に与える影響が、科学的にも少しずつ見えてきたことがあります。
その流れの中で、日本でも話題になった本が、スウェーデン発のベストセラー『スマホ脳』です。
今回は、連載記事シリーズ|スウェーデンに学ぶ デジタル時代の子ども・学び・ウェルビーイング(全4回連載)第3回目として「スマホ脳と子どもの脳・メンタルへの影響とは?スウェーデンのスクリーンタイムガイドラインと家庭でできること」をテーマにお届けします。
\連載シリーズ/
スウェーデンに学ぶ デジタル時代の子ども・学び・ウェルビーイング(全4回)
- スウェーデンで携帯・スマホがいち早く普及した背景
- スウェーデンのICT教育に学ぶ|デジタル教材と紙の教科書をどう使い分けるか
- スマホ脳と子どもの脳・メンタルへの影響とは?スウェーデンのスクリーンタイムガイドラインと家庭でできること←今回のテーマ
- 特別支援×多言語教育を支えるデジタル教材|北欧インクルーシブ教育の教室デザイン
ベストセラー『スマホ脳』が警告する子どもの脳へのリスクとは
日本語にも翻訳された『スマホ脳』は、スウェーデン人精神科医アンデシュ・ハンセンが書いた本です。
彼は、
- ハイペース
- 絶え間ない通知
- スクリーンの頻繁な使用
といったデジタル環境が、
- ストレス
- 不安
- 精神疾患
の一因になりうると指摘しています。
通知を受け取ったり、新しいものを求めてスクロールしたりスワイプしたりするたびに、脳内ではドーパミンが活性化されます。

そのため、スマートフォンは脳が
もっと使いたい
と感じる、一種の報酬マシンとして機能してしまいます。
その結果、私たちの意思決定や集中力は低下する可能性があり、モバイルの使用は
- 認知エネルギー(「精神的な帯域幅」)を奪う
- 気が散りやすくなる
- 集中しにくいくなる
という状態を招きやすいと警告しています。
さらに、報酬系と意思決定に関わる脳の部分(いわゆる「リスク・報酬系」)は、人生のかなり後半まで完全には発達しません。

そのため、特に若者や子どもは、大人以上にスクリーンの使用を自分でコントロールするのが難しいと指摘しています。
ハンセンは、テクノロジーの使用を完全にやめることを求めているわけではありません。
デジタルライフスタイルを脳にとって健全な方法で管理し、デジタルの奴隷になるのではなく、こちらが主体的にコントロールする必要がある
とし
適切なバランスを見つけ、意識的に使うことが重要だ
と強調しています。
WHOのスクリーンタイム指針とスウェーデンでの「子ども×スマホ」議論

2019年、WHO(世界保健機関)は、小さい子どものスクリーンタイムについて、
- 2歳未満の子どもならゼロ
- 未就学児は1日1時間程度
という目安を示しました。
このWHOの指針も、スウェーデンで
教育の中でのデジタル化をどう進めるべきか?
という疑問が向けられたきっかけのひとつになりました。
スウェーデン公衆衛生庁(2024)による子どものスクリーンタイム推奨
その後、スウェーデンの公衆衛生庁(Folkhälsomyndigheten)は、2024年に子どものデジタルメディア使用(スクリーン時間)に関する明確な推奨を出しました。
0〜2歳|乳幼児期のスクリーンタイムとスマホ脳リスク

- 画面を使わないことが望ましい
- 「できればスクリーン使用は避けてほしい」
というスタンス
2〜5歳|未就学児のスクリーンタイムの目安と親子の関わり方

- 1日あたり最大1時間程度
- どのコンテンツを見るか・誰と見るかに大人が関与する
- 子ども任せにせず、大人と一緒に見る「共同視聴(co-viewing)」
を推奨
6〜12歳|小学生のスマホ・ゲーム時間と家庭で決めたいルール

- 1〜2時間/日を目安
- スクリーンを使わない時間(家族での食事など)を意識的につくる
- 夜(就寝前)はスクリーンを寝室に持ち込まないなど、「メディアフリーな時間・場所」を設ける
ことが勧められています
さらに近年は、親自身のデジタル習慣を見直す動きも強まっています。
親のスクリーンタイムが子どもにどのような影響を及ぼすのか
についてのデータ収集も進められており、大人側のスマホとの付き合い方も重要なテーマになっています。
学校ICTより深刻な問題?子どもの「個人スマホ」スクリーンタイム

一方で、実際のところは、学校のデジタル化(授業で使うタブレットやPC)よりも、個人のスマートフォンの使用によるスクリーンタイムの長さのほうが、社会問題として深刻になっています。
- 学校の内外を含めて、スマートフォンの使用を控えるよう推奨する
- 授業中や校内でのスマホ使用を禁止する
といった決定をする学校も増えてきました。
特に、ゲームや動画視聴の長時間化は、子どもの健康への大きな懸念材料です。
スクリーンタイムが長くなればなるほど、子どもが体を動かす時間が短くなることが、多くの研究でも示されています。

子どもの身体活動は、体づくりだけでなくホルモンバランスにも影響し、健やかな心をつくることにも大きく関わります。
そのため、スウェーデンでも、
多くの子どもが健康に成長するために、スクリーンタイムについては家庭でルールをしっかり決めてほしい
というメッセージが繰り返し発信されています。
まとめ|子どものスマホ脳を防ぐために家庭でできる3つのこと

スウェーデンの議論とガイドラインから見えてくるのは、
- スマホやタブレットを「ゼロ」にすることではなく
- 子どもの脳と体の発達にとって無理のない時間と使い方の“枠”を、家庭で丁寧に決めていくこと
の大切さです。

とくに、
- 就寝前はスマホを寝室に持ち込まない
- 食事中や家族で話したい時間は「ノースマホ」の時間にする
- 小さい子ほど、親子で一緒に画面を見る「共同視聴」を意識する
といった、シンプルだけれど続けやすいルールを親子で話し合うことが、子どものスマホ脳リスクを減らす第一歩になるのではないでしょうか。
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参考リンク(外部サイト)|スウェーデンの教育デジタル化・多言語教育・特別支援を深く知るために
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- JETRO|スウェーデンに見る社会課題解決 教育現場のデジタル化
- IDEAS FOR GOOD|IT先進国スウェーデン、学校で「紙と鉛筆のアナログ教育」に戻る計画を発表
- Government Offices of Sweden|Government investing in more reading time and less screen time
- Taylor & Francis online|Attitudes and beliefs on multilingualism in education: voices from Sweden
- ResarchGate|Transforming Insecurity into a Commodity: Using the Digital Tools Unikum and InfoMentor as an Example in Swedish Education
- Sage Journals|Enacting Special Education in a Digitalized School: Opening for New Understandings of a Digitalized Special Educational Practice
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
- ウプサラ
2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。
