現代社会における「プリンセス」のありかたとは?
ー国民の心理的安全性を高めるオランダ王太女が発するメッセージの可能性とその拡がりー

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー

日本では、まだまだ「プリンセス」がホットワードのようですね。

 

つい最近、筆者が住むオランダでも当地の王女に関することが話題になったので、ご紹介したいと思います。

世界で初めて同性婚を合法化したオランダ…オランダ首相は王族の同性婚の可能性も保証!

現在のオランダ国王には、3人のお子さんがいらっしゃいます。

 

全員女性で、長女が2021年12月7日に18歳なったアマリア王女(Catharina-Amalia van Oranje-Nassau)。

オランダ王女「カタリナ=アマリア」

オランダ アマリア王女 © RVD – Martijn Beekman

オランダでは男女問わず長子が王座を継ぐことになっているので、順当にいけば次に王位に就くのはこのアマリア王女であると言われています。

 

そして18歳という年齢は、オランダでは成人を意味し、結婚もできるようになるのです。

 

実はオランダは世界で初めて同性婚を合法化した国

 

そのため、オランダでは以前から

仮にアマリア王女が女性と結婚を望んだ場合、彼女は王位を継承できるのか? そして彼女に子供が生まれなかった場合はどうなるのか?

ということが取りざたされていました。

 

そしてそれに対して、オランダ首相のマルク・ルッテ氏がメディアでのインタビューで以下のように回答したのです。

アマリア王女が女性と結婚したとしても王位にとどまることができます。

そして彼女に子供がいなくても、彼女は死ぬまで王位に就いていられるし、彼女の死後は妹たちのうちの一人や(仮にいれば)その子供たちに王位を譲ることができるのです。

首相が王家にも同性婚の選択権を示したことの意義

首相のメッセージは王女だけでなく他の誰かを救ったかもしれない

オランダのプリンセスが発したメッセージ

とはいっても、別にアマリア王女が実際に同性愛者だったということではありません

 

当時はご自身のセクシャリティも公表していなかった10代女子アマリア王女にとっては、大人たちが自分の結婚をあれこれ取沙汰すのは気持ち悪かったかもしれませんね。

 

つい最近、彼女は

結婚相手は男性になるはず

いう趣旨のコメントをしています。

 

けれどそうやって首相が王家にも同性婚の選択権があると示したことは、大きな意味があると思います

 

公表されていないだけで、もしかしたら、オランダ王家にも同性愛者はいるかもしれませんから。

 

ルッテ首相の回答は、もしかしたら存在するかもしれない誰かを救ったかもしれません

メンタルヘルスケアの大切さや専門家を定期的に頼ることについてフランクに語るオランダ王女

王族からメンタルヘルスや自分の弱さについて語ることは人々の心理的安全性を高める可能性も

オランダ王家のメンバーは、18歳になるときに伝記が発売されるのが伝統なのだそう。

オランダ王女アマリアと自伝の著者

▲アマリア王女と自伝の著者[RVD – H.K.H. de Prinses van Oranje]

つい最近、アマリア王女の伝記も発売されました。

そしてその本の中で、アマリア王女は

幼い頃から児童心理学者を訪ね、最近では定期的に専門家とメンタルヘルスについて話し合っています。

 

それをタブーだとは思わない。公の場でそれを言っても問題ないはず。

 

特に2018年に叔母(※)が自死してからは、時々専門家と話すのはごく普通のことだと考えています。

※叔母とは、アルゼンチン出身のマキシマ王妃の妹で、オランダ王家のメンバーではない。


出典:
Bijna 18-jarige Amalia in boek openhartig over mentale gezondheid en toekomst[From NOS]を筆者が翻訳

という趣旨のことを話しているのです。

 

こういうオープンさも、オランダ王家の自由な気質を感じるとともに、その弱さを見せることでまた誰かの救いにもなっているような気がします。

 

専門家の助けを借りるのは恥ずかしいことではないというメッセージに、救いを見出す国民もいるのではないでしょうか。

将来王座を継ぎ女王となる決意が感じられるアマリア王女が発したメッセージとは?

オランダ国旗

でも彼女自身はまだ学生ということもあり、王位を継承する心の準備ができていないそうです。

 

そのため、仮に近い将来に現国王が退位または逝去というような事態になるなら、しばらくは母親であるマキシマ王妃にその王座を守ってほしいと考えているのだとか。

 

そして父親である現国王には

健康的な食事とたくさんの運動を続けて、健康でいてね。

とお願いしているそうです。お茶目ですね。

オランダ王位継承

(将来自分が女王になって)外交を通じて悪い状況を防ぐことができれば、そして世界を少し良くしたなら、私は幸せです。

 

私は私の国に奉仕しています。私はオランダに命を捧げます。

というメッセージも王女の自伝には記されているそう。

 

準備ができていない

と言いながら、もうすでに国とご自分の役割をしっかり考えている様子がうかがえます

 

彼女が王座に就く未来を、楽しみに待ちたいものです。

記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
ハーレム

オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。

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