歴史的にも大きな一歩!
日本のリーダーシップで立ちあげあられた北朝鮮人権問題解決の調査委員会
―東京オフィス設立から約7年。印象に残る仕事はなんですか?
吉岡:東京オフィスとしては、北朝鮮の人権問題ですね。
北朝鮮には調査員が入れないため、北朝鮮国内で何が起きているのかわからないことだらけの状況でした。その状況を打開するために、日本政府に提言を続けた結果、日本のリーダーシップによって欧米諸国と手を取り合い、国連の中に調査委員会を設けることができました。
拉致問題解決にもつながる、調査委員会の設立は、歴史的にも大きな一歩であり、私たち東京オフィスの短い歴史の中でも印象深い出来事のひとつです。
また、東京オフィスが初めて日本国内のテーマとして取り組んだのが、児童養護施設の子どもたちの権利です。きっかけは、東日本大震災後、震災孤児の人権保護のため何かできないかと考えたことでした。
約4万人の親と暮らせない子ども達…
日本国内の深刻な人権問題解決のために
震災孤児は241人。震災孤児に限らず、日本国内には、虐待や貧困などの理由から親と暮らせない子どもたちが約4万人もいます。そして、その9割近くが児童養護施設や乳児院に入っています。
あたたかい家庭で育つことは、子どもの人権です。
その権利が与えられる子どもが1割ほどしかいないという日本の現状は、国際的スタンダードから大きく逸脱しています。そのため、私たちは日本の社会的養護の状況を人権問題として扱うことにしました。
もし実親と暮らせないのであれば、まず養子縁組、そして里親委託、最終手段が施設収容、と国際的にも決められています。日本ではこの順番がひっくり返ってしまっています。2年間の調査で、施設で暮らしたことのある子どもや、職員、里親、専門家など約200人にインタビューを行い、報告書をまとめました。
報告書には、施設内でのいじめや性的虐待など、目を覆いたくなるような証言がまとめられています。中でも私たちが問題視しているのが乳児院です。乳児院は基本的に0~3歳になるまでの赤ちゃんが暮らす施設なのですが、乳幼児期に特定の大人と愛着関係を築けないと、愛着障害を起こす可能性が高くなってしまいます。
他の先進国では何十年も前に乳児院が廃止されたところがほとんどなのに、日本では今も改築・新設されている。国内における緊急性の高い人権問題として、積極的に政策提言を行っています。
想像力は、多様性と共存というグローバル時代に欠かせない力
―グローバル時代を生きていく子どもたちに期待することはありますか?

▲世界最大規模の国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」のメンバーとして、ワールドワイドに波及する活動で注目を集めている吉岡利代さん
吉岡:想像力豊かな人に育ってほしいです。人権問題も想像力なしには解決できません。
一人ひとり置かれた環境が違うのは当たり前。でも想像してみてください。朝、学校に行ってみたら校舎が爆撃されいて、運動場では兵士たちが訓練をしている。これは紛争下の地域ではよくあることです。
遠くの国で起きている遠くの問題ではなく、その環境に置かれた人の感情を想像してみて欲しい。想像力は、多様性と共存というグローバル時代に欠かせない力だと思います。

▲各国で活躍するヒューマン・ライツ・ウォッチの仲間たちと
どの国でも人権問題の被害者の多くは子どもです。各国の子どもたちが、どういう状況に置かれているのか、ヒューマン・ライツ・ウォッチではHP上にたくさんの報告動画を用意しています。ぜひ、お子さんと見ていただき、想像力を働かせていただきたいです。
世界とポジティブに繋がる心と想像力を育む子ども時代の留学
積極的に動けば語学力も磨かれる機会にチャレンジしてみてください!
―これからお子様と共に異文化交流や、親子留学にチャレンジされる方々にアドバイスをお願いします。
吉岡:現地の人たちとの交流を大切にしてください。様々な社会的バックグラウンドを持つ人と向き合う機会をひとつでも多く持てたら、どこか国のニュースが我が事のように感じられるはずです。
留学先でボランティア活動に参加するのもいいと思います。私もアメリカ留学時代に老人ホームでボランティアをしました。
わざわざ日本人が来てくれた
と大歓迎を受け、学校以外のコミュニティがあることにも救われましたし、英語の勉強にもなりました。アクションを起こすことは自信にもつながると思います。
私もそうでしたが「親子留学」が、家の外での積極性をくれました。
帰る家には家族がいる。だから外では日本人コミュニティに頼らず、積極的に海外の人たちと関わろうと思えたんです。子どもが安心して世界と関われる親子留学で、想像力を養い、その先にあるアクションを起こしてください。
文/宇佐見明日香 編集・撮影/内海裕子
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